東京都写真美術館で行われたポーランド映画祭2017の中で、12月9日(土)にはミハウ・コンドラト(Michał Kondrat)監督による映画『二つの冠』が上映されました。これは日本で初公開の機会であり、ポーランドでは本年10月13日から公開されている作品です。ポーランドでの公開は、コルベ神父が創刊した雑誌「聖母の騎士」発刊100周年を記念し、ローマでの研究会開催に先立ったものとなりました。
東京での上映前には、駐日ローマ法王庁大使ジョセフ・チェノットゥ大司教が開会の挨拶をして下さり、ポーランドの重要な聖人である聖マキシミリアン・コルベの幼少の頃のエピソードを紹介すると同時に、ヤツェク・イズィドルチク駐日ポーランド共和国大使に、上映への招待に対する謝意を、ミハウ・コンドラト監督には映画製作に対する御礼を述べられました。この上映には、日本に出張中のマウゴジャータ・ヴィエジェイスカ(Małgorzata Wierzejska) ポーランド外務省広報文化外交局長もご列席下さいました。
上映後の質疑応答にはコンドラト監督と、俳優のタデウシュ・フデツキ(Tadeusz Chudecki)さんが登壇し、映画を通してアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所でよく知られる聖人の、全人生、特に日本にまで彼がたどり着いていたことを世界の人々に知ってほしいという思いから映画を製作したことを強調されました。
さらに、12月11日(月)には、撮影地のひとつでもある長崎のカトリックセンターで2度目の上映が行われました。
この上映会のはじめには、ヨセフ高見長崎大司教の名の下で、カトリックセンター事務局長の下窄英知神父にご挨拶いただき、上映会の開催に対する駐日ポーランド大使館ならびにポーランド広報文化センターへの謝意などをお話いただきました。この上映会にはイズィドルチク大使も参加されました。
次に、長崎の原爆投下を生き抜いた90歳のフランシスコ会修道士 小崎登明様(トマス様)にもご登壇いただき、聖マクシミリアン・コルベに関するお話や、コルベ神父の存在が小崎修道士の人生、世界観に及ぼした影響をお話いただきました。その後、イズィドルチク大使より、日本におけるキリスト教に関するポーランド文化の継承、長年に亘り、コルベ神父、ミエチスワフ・ミロフナ(Mieczysław Mirochna)神父をはじめとする長崎でのポーランド出身の聖職者たちのように日本の子ども、青少年の育成にかかるご尽力をされたことに対して感謝状が贈られました。
上映後、監督と俳優が登壇をしトークショーが持たれました。この日は特別に寒く、夜も遅くなり始めていたにもかかわらず、観衆の皆さんは会場に残って下さり、非常に有意義で対話的なひと時を過ごしました。『二つの冠』の感想やエピソード、映画の中に登場したゼノ神父の話、ポーランドにおける巡礼や監督の次の作品に関する話題など話は尽きず、名残惜しみながらも、ポーランド広報文化センター ミロスワフ・ブワシチャク所長の挨拶と、満場の拍手にて閉会されました。
この映画は日本人および日本のポーランド人コミュニティ、キリスト教信者の間で温かく受け入れられ、心に明かりをともすものとなりました。それも偏に、コルベ神父が1930年から36年まで日本で過ごした事実が知られているため思われます。
コルベ神父の手記と彼を知る人々の証言をもとにこの映画の脚本を作ったのはヨアンナ・フィチンスカ(Joanna Ficińska)さんでした。撮影はポーランド、イタリア、日本で行われ、音楽はロバート・ジャンソン(Robert Janson)が手がけました。製作元はコンドラト・メディア、協力は聖マキシミリアン・コルベ映画協会、Telewizja Polskaと国立オーディオビジュアル研究所(Narodowy Instytut Audiowizualny)でした。