ボッちゃんはどうやって日本にやって来たの?
ある年の夏が終わろうとしていました。ボッちゃんという名前のコウノトリは、この前過ぎた18歳の誕生日にもらった冒険小説に読みふけって夜を過ごしたところでした。それは太陽が毎朝目覚めると、それと共に世界が起きだすような遠く遠くの東の国への旅を記した手記でした。著者はコウノトリたちの間では有名な映画人、探険家であり好奇心にあふれた伝説的な人物(鳥物?)、ズィグムント・ボチャノヴィ(日本語風の響きに直すと鸛乃井頼久かんのい・よりひさ あたりの名前)ボッちゃんは遠く遠くの東の国をまだどこかで夢に見ながら、よく寝た目を開きました。あれ、なんだかおかしいぞ。太陽は既に高く、とても高く昇っていたのでした…
ボッちゃんは足を揃えて飛び起きました。ここに一人でいることに気がついたのです。ちょうど今日は、コウノトリが群になって暖かな国へと飛び立つ毎年恒例の、その日だったのです。ボッちゃんは・・・寝坊したのでした。
急いで少し翼を動かし、軽く体操をしました。仲間たちに追いつかなきゃ、と思い、大急ぎで朝ごはんを食べて(もう何を食べたかも覚えていません)、航路を考え始めました。ところが、雪をすっぽりかぶった山や、永遠に続く森、温泉、杉の香りや水平線に見える日の出・・・遠く遠くの東の国のことが忘れられませんでした。例の冒険小説のオーディオブック版を聞くため、イヤフォンを耳にさくっと入れて、ボッちゃんは飛び立ったのでした・・・
来る日も来る日も、時々休みながらも飛び続け、イヤフォンはずっと耳に入れたまま。びゅんびゅん飛びつづけるボッちゃんでしたが、兄弟たちの姿はどうにも見当たりませんでした。もう少しかな、と思いながらどんどん前に進みました。ある日、水平線の向こうに見たものは・・・
おや、と思って赤いくちばしを少し開きました。くちばしが開いたのは恐れからか、驚きからか、自分でも分かりませんでした。大海原から昇ってくる燃えるような球状の太陽・・・遠く遠くの東の国・・・
その眺めは言葉にしがたいほど素晴らしいものでした。ボッちゃんはそこで初めて、自分が道を間違えて飛んできてしまったことに気がつきました。ここが彼の新しい家になるとは、この時、彼はまだ知りませんでした・・・
ズィグムント・ボチャノヴィの曾孫
ボッちゃんの手記より
※ボッちゃんはプシェメク・ソボツキさんによりポーランド広報文化センターのためにデザインされたキャラクターです。画像の無断持ち出し、転用はご遠慮願います。