2012年から毎年行われている国民読書。同じ日に、同じ作品(ポーランドの文学作品)を共に読む催しです。2020年に選ばれた作品は、ユリウシュ・スウォヴァツキの『バラディーナ』(Juliusz Słowacki „Balladyna”)。日本でも、東京外国語大学のご協力のもと、12月に一緒に読むイベントを開催してきましたが、今年は感染症の影響で、集まって読むことは叶いませんでした。
この『バラディーナ』とは、どんな作品なのか、日本の皆様にご紹介します。
この作品は戯曲で、1834年にスウォヴァツキによって書き上げられ、1839年にパリで発表されました。
ある村の質素な家に、貧しい未亡人の女性が美しい2人の娘と一緒に暮らしていました。姉妹の名前は、アリーナとバラディーナ。アリーナは穏やかで皆に愛される人物で、バラディーナは自分勝手で、どうにかして富と名声を手に入れたいと企んでいました。ある日、占い師が送り込んできた未亡人の王子キルコルが、アリーナもしくはバラディーナを妻に迎えたいと申し出、森でより多くのラズベリーを採ってきた方にする、と言いました。バラディーナは自分には勝ち目がないことを確信し、勝負の途中でアリーナを殺害します。
こうして王族に入ったバラディーナは、農民の出身を隠すため、母親を人民の前に出すことを避けます。さらに、自らが王位に就くため、夫を殺害することを考えつきます。バラディーナは、自分に好意を寄せていた配下の騎士に協力を請い、夫を毒殺し、「無事に」女王の座に就きます。そして騎士も殺害します。
女王として裁判に参加したバラディーナ。①騎士コストリンの殺人罪(つまり自分自身)、②美しいアリーナの殺人罪(つまり自分自身)、③母親をぞんざいに扱った罪(つまり自分自身)の全ての案件に、死刑を言い渡します。最後の判決を言い渡した瞬間、空から雷が落ち、バラディーナの命を奪いました。
『バラディーナ』は善と悪の存在を描いた作品です。
劇の途中までは、ことごとく善が否定され、悪が蔓延りますが、最後の瞬間には、悪に制裁が下ります。
画像のポスターは、プワヴィという街で行われた国民読書の際のものです。姉妹と、彼女たちの生死を分けたシンボルであるラズベリーが描かれています。
来年は、皆様と一緒に国民読書を行うことができることを願いつつ、これからもどうぞ、ポーランド文学に関心をお寄せ願います。