18.11.2022 ニュース

「連帯の社会」

ピョートル・アラック ポーランド経済研究所所長 (photo: PIE)

(非公式翻訳)

 戦争により数百万ものウクライナ人が祖国を追い出されましたが、ポーランド人はそれらの戦争避難民を自宅へ快く招き入れました。ポーランド政府による前例のない決定により、ウクライナ人は、選挙権を除いてポーランド人と変わらない生活条件を得ることが出来ました。

 2022年2月4日、ロシア軍がウクライナ域内に侵入し、第二次世界大戦以降欧州で最大規模の戦争が始まりました。国連のデータでは、約1400万人が自宅から離れなければならず、約800万人が国外へ非難しました。その大多数が女性、子供、高齢者でした。

 第二次世界大戦のときと全く同じで、ロシアはシベリアへの強制送還を始め、その部隊はエリートや捕虜の人々を拷問し、女性を強姦し、占領した町や村で大量虐殺を行いました。ロシア軍のこれらの残虐行為により、何百万もの女性は逃げるしかありませんでした。80年前のこと、それらの女性の中に私の祖母がいて、彼女は妹と共に、安全の為に、野蛮な人間が支配しているウクライナに戻らずポーランドへ移住することを決めました。私を含めた多くのポーランド人にとって、ウクライナでの戦争は隣国への侵略というだけでなく、私たち自身への侵略でもあるのです。

 ロシアによる侵略開始以来、ポーランドとウクライナ国境を越えたウクライナ避難民は740万人以上に上ります。560万人がすでに逆方向へ非難したことを考えると、およそ150-200万人がポーランドに残っていると考えられます。2014年のドンバス戦争によるウクライナ人移民の移動と合わせると、ポーランドに住むウクライナ人の総数は300-350万人程になります。

ほぼすべてのポーランド人がウクライナ避難民支援に協力した

 成人のポーランド人の70%がウクライナ避難民支援に参加するという、ポーランド社会の自発的な対応は、どんな予想をも上回る結果でした。一部の部屋を貸すだけでなく、家全体を提供する人もいました。類似した他の危機の際は難民キャンプで寝泊まりするケースが多いですが、7%のポーランド人の行為により、今回は数十万もの家族が個人宅で寝泊まりすることが出来ました。

 59%のポーランド人が避難民の生活必需品を自ら購入し、53%が避難民への資金集めに協力しました。ポーランド経済研究所の調査によれば、ポーランド人は最初の3か月間で、戦争から逃れたウクライナ人を支援するために最大20億ユーロ支出しました。

現金給付、健康支援、教育

 ポーランドが法整備をしたことにより、ウクライナ人はポーランド人同様に個人番号PESELを付与されます。それにより彼らはポーランドに合法的に18か月滞在が出来、子供一人あたり約120ユーロがすべての家族に与えられるなど、様々な社会サービスを受けるのに使えるデジタルIDである「信頼プロフィール」を作る権利も得ることが出来ました。

 戦争による避難民の多くは女性でした。そのうちの60%以上は子連れだったため、子供の学校か保育園を見つけてから自分の仕事を探さなければなりませんでした。

 ウクライナ避難民は、家族、育児、就学、介護などの給付金として、最大2600ユーロを受け取る権利があります。子育て支援の為、地方自治体は手続きを簡略化して多くの保育所を開き、多くの公的機関が臨時宿泊所に変わりました。避難民にはまた、1人当たり80ユーロの一時支払いも認められました。さらに、無料で精神支援、食糧支援、医療も受けることが出来ました。

 すでにリモート教育を経験済だった為、各学校は素早く体制を整えてウクライナからの生徒を追加で20万人(ワルシャワだけで約2万人)受け入れることが出来ました。避難民の中からウクライナ語話者を雇うため、教師採用の基準が緩められました。ポーランドの学校でポーランド語で学ぶのに加え、多くのウクライナ人の子供たちがリモートでウクライナの学校の授業にも参加しました。

ウクライナ人雇用の簡略化

 ポーランドはまた、ウクライナ人雇用に関する法律も簡略化しました。ウクライナ人雇用の際、今では7日以内に関連する労働局に通知をすれば済みます。ウクライナ人は、ポーランド国内でも、ポーランド人と同じ条件で仕事を見つけ、働くことが出来ます。さらに、ウクライナ人により 10,000 以上の企業が設立されており、これは新規登録企業のほぼ10分の1を占めています。

 また、これも前例のないことですが、ポーランド人もウクライナで同じように雇用されることが出来ます。たとえ和平合意がなくとも、ウクライナ再建のプロセスが開始されたら、このことは非常に役立つでしょう。

 OECDは、ポーランドによるウクライナ戦争避難民への支援額が2022年に84億ユーロになり、OECD加盟国で最大になると見積もっています(OECD全体の支出額は268億ユーロの試算)。その次にドイツ(68億ユーロ)、チェコ(20億ユーロ)と続きます。

 ポーランド社会が示した連帯は驚くべきものです。ポーランドとウクライナには、互いに歴史的に暗い側面も持ちながらも、多くの共通点がありました。私個人と似た家族の歴史を語ることが出来たり、第二次世界大戦中にヴォルィーニ州でウクライナ人の過激派がポーランド人に対して行った犯罪行為を記憶しているポーランド人は多くいます。しかし今ではそれも過去のことです。困っている隣人、が安全に自宅へ帰れるようになるまで私たちが支援を続けるべきなのは、言うまでもありません。

 

ピョートル・アラック 

 

このテキストは、国立記銘院とポーランド国家財団との歴史プロジェクトの一環として、ポーランドの月刊誌「最も大切なことのすべて(Wszystko co Najważniejsze)」に同時掲載されました。

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