麻布十番の一角に、ハンガリーの旗の色に彩られた近代的な建物があります。どなたでもお入りいただける展示スペースは、天井にハンガリーの伝統工芸レースのモチーフがあります。
笑顔でお迎え下さったのは、ハンガリー文化センター所長のアニタ・ナジさん。本日、ご紹介いただく「ショムローイガルシュカ」は、ハンガリーを代表するデザートだそうで、取材の後に味わうのを、スタッフの皆さんが楽しみに待っているのだとか。
ショムローイガルシュカという名前には、どんな意味があるのでしょうか。
-Somlói galuska、もとはSomlyóという丘にちなんで名づけられました。このデザートをはじめに作ったパティシエが、この丘の近くの出身だったそうです。1950年代の終わりに、ブダペストにある由緒正しいレストラン「Gundel」の主任ウエイターが考案し、パティシエが作ったものです。ガルシュカとは小さいお団子という意味で、大きな生地を削って鍋に投入し、茹でるお団子のことを指します。このデザートも、大きく作って取り分ける様子から、この名前がついたようです。
ショムヨーが、ショムロー・・・途中で名前が変わってしまったのですか?
-1958年のブリュッセル万博に出品した際に、スペルを誤って紹介されてしまったそうです。万博で受賞したので、名称はそのまま、使われることになりました。そのため、現在ハンガリーで、このデザートを知らない人はいないと思いますが、ショムヨーの丘にちなんだ名前と知る人は、ほとんどいないかもしれませんね。
ハンガリーでは、家庭で作るデザートなのですか?
-作ることもできますが、一般的には買ったり、喫茶店やレストランで食べます。どこのお店にも、ショムローイガルシュカがあると言えるほど定番です。私は、小さい頃、週末のごはんの後にショムローイガルシュカを食べられるのを、いつもとても楽しみにしていました。お菓子屋さんで買うときは、カップに入って一人分ずつ分かれています。
-また、2010年にインターネット上で行われた「ハンガリー人が選ぶ、お気に入りのデザート」という投票では、このデザートが一位に輝きました。また、過去には7平米を超えるショムローイガルシュカが作られたこともあるそうです。
7平米超のショムローイガルシュカ、一体何人分になったのでしょうか・・・
ショムローイガルシュカを作る時のアドバイスはありますか?
-シェフが言うには、Love & Rumです(笑)。香り付けにラム酒を加えており、スポンジケーキに染み込ませるために、シェフはラム・シロップをたっぷりぬった後、一晩冷蔵庫で寝かせています。それから、今回ご紹介しているのは、王道のものなので、3種類のスポンジケーキを使っていますが、面倒であれば種類を減らしても良いですし、スポンジは買ってきてもOK。気軽に作ってみて下さいね。
ひたひたになったものをお皿に載せると、ほろりと崩れるので、仕上げや、運ぶ時に神経を尖らせる必要がなさそう。おうちでたくさん作って惜しみなくみんなに振舞いたいショムローイガルシュカ。
スポンジを噛むと、じゅわっと染み出すシロップと、クルミの食感が楽しいのです。時々のぞくレーズンを探すのは、宝探しのよう。ハンガリーで長く愛されているデザートを、ぜひお試しくださいね。
<レシピ>
■材料■
バニラ・プリン
※牛乳 250g
※生クリーム 250g
※砂糖 40g
※バニラエッセンス 15滴
卵黄 4個
砂糖 20g
コーンスターチ 5g
スポンジケーキ
卵 100g(M サイズ)
砂糖 66g
小麦粉 66g
バター 33g
くるみ入りスポンジケーキ
卵 100g(M サイズ)
砂糖 66g
小麦粉 66g
バター 33g
すりおろしたくるみ 15g
ココアのスポンジケーキ
卵 100g(M サイズ)
砂糖 66g
小麦粉 60g
バター 33g
ココアパウダー(純ココア) 6g
ラム・シロップ
砂糖 150g
水 200g
ラム酒 30g
レーズン 60g
すりおろしたレモンの皮 ½個分
すりおろしたオレンジの皮 ½個分
チョコレートソース
水 100g
砂糖 120g
ココアパウダー(純ココア) 50g
生クリーム 65 g
生クリーム
生クリーム 300g
■作り方■
バニラ・プリン
1. ※を一つの鍋で沸騰させる。
2. 卵黄と砂糖を泡立てた後、コーンスターチを加え混ぜる。2に1を加え、弱火で沸騰させ温度が冷めるまで置いておく。(急ぐ場合は粗熱が取れたら冷蔵庫に入れる)
スポンジケーキ
1. 卵と砂糖を泡立てる。
2. 4にふるった小麦粉を少しずつ入れ泡をこわさないように混ぜ、その後溶かしたバターを加え、更に混ぜる。
3. 20x25cmの耐熱オーブン皿にオーブン・シートを敷き、5を入れて、予め予熱したオーブンで180度で8分間焼く。
くるみ入りスポンジケーキ
1. 卵と砂糖を泡立てる。
2. 4にふるった小麦粉を少しずつ入れ泡をこわさないように混ぜ、その後溶かしたバターを加え混ぜ、更にくるみを入れて混ぜる。
3. 20x25cmの耐熱オーブン皿にオーブン・シートを敷き、5を入れて、予め予熱したオーブンで180度で8分間焼く。
ココアのスポンジケーキ
1. 卵と砂糖を泡立てる。
2. 小麦粉とココアパウダーをふるい、4に少しずつ入れ泡をこわさないように混ぜ、その後溶かしたバターを加え、更に混ぜる。
3. 20x25cmの耐熱オーブン皿にオーブン・シートを敷き、5を入れて、予め予熱したオーブンで180度で8分間焼く。
ラム・シロップ
水と砂糖を合わせて沸騰させ、火からおろしたらラム酒・すりおろしたレモンの皮・すりおろしたオレンジの皮・レーズンを加え、温度が冷めるまで置いておく。(急ぐ場合は粗熱が取れたら冷蔵庫に入れる)
生クリーム
生クリーム300gを、角が立つまで泡立てる。
チョコレートソース
水と砂糖を合わせて沸騰させ、50gのココアパウダーを加え、滑らかに混ぜる。
65gの沸騰させた生クリームを加え、混ぜた後、冷やす。
温度が冷めるまで置いておく。(急ぐ場合は粗熱が取れたら冷蔵庫に入れる)
完成
1. ショムローイ ガルシュカの以下の材料をオーブン皿等の大皿に重ね入れる。
ココアのスポンジケーキ→ラム・シロップを表面にぬる→バニラ・プリン→くるみ入りのスポンジケーキ→ラム・シロップを表面にぬる→バニラ・プリン→スポンジケーキ→ラム・シロップを表面にぬる→バニラ・プリン。
★ラム・シロップはスポンジケーキにたっぷりぬって、よく染み込ませるのがポイントです。
2. ショムローイ ガルシュカを冷蔵庫に入れ、全体が落ち着くまで冷やす。
仕上げに、一番上に生クリームを絞る。
食べるときは、ショムローイ ガルシュカをスプーンで器に取り分け(スプーンでスポンジをすりおろすように)、一番上にチョコレートソースを振りかける。
<ケーキの制作とレシピ提供>
ハンガリー文化センター
写真撮影 Maciej Komorowski