東京都調布市にある、とってもかわいらしい店構えのドーナツ屋さん「ポンチキヤ」。今回のインタビューは、こちらで行わせていただきました。
店内のあたたかく、柔らかい雰囲気にぴったりの優しいオーラをまとってお越しくださったのは、今回のケーキ「シャルロトカ」を焼いて下さった前田まゆさんです。
こんにちは!本日はよろしくお願いいたします。
お話を聞かせて下さるのは、前田さんと、ポーランド広報文化センター所長のマリア・ジュラフスカさんです。
シャルロトカという名前は、フランスで生まれたお菓子で、その名前はシャーロット皇女に由来するそうです。
マリアさん:ポーランドの二大ケーキといえば、セルニックとシャルロトカだと思います。シャルロトカは、「ヤブウェチュニク(jabłecznik)」とも呼ばれ、私にとってはこの名前のほうが親しみがあります。
りんごの生産量ヨーロッパ第一位のポーランド。小ぶりで酸味のある種類が多く、とても安く買うこともでき、庭にりんごの木がある家も少なくないそうです。
前田さん:私は世界のお菓子を調べたり、作ったりしていますが、実はロシアにも似た名前の、りんごを使ったケーキがありました。ポーランドのシャルロトカは家庭的なケーキであるけれど、複数のスパイスが使われることが素敵だなと思います。
マリアさん:家庭によって、レシピは様々です。ケーキ屋さんで買うこともできますし、その場合は見た目もきれいで、メレンゲの層もあったりして美しいです。私の父方の家では、毎日17時にお茶の時間をもつという伝統があり、コーヒーや紅茶には必ず甘いものを添えました。私が幼い頃は、物不足で母は時々材料調達に苦労していたと思います。冬には果物も手に入りづらい中で、りんごだけは手に入れることができたので、夏の間にピューレ状に加工して保存していました。それを使ったヤブウェチュニク(シャルロトカ)を、数日分のお茶菓子として多めに焼いていました。
マリアさんのご家庭でのお茶の時間は、最少催行人数はお父様お一人から、週末には親戚や友人を招いて大人数で行うこともあったそうです。
マリアさん:他には、プルーン入りのイーストを使ったケーキもよく食卓に並んでいました。いつでもチョコレートや海外の食材が手に入るようになった現在でも、シャルロトカは根強い人気で、カフェやレストランで食べることのできるデザートの定番です。
みんな大好きシャルロトカを作る時のコツはありますか?
前田さん:りんごの酸味を生かして、惜しまずふんだんに使うと、ポーランドの味に近づくと思います。日本で手に入る種類だと、紅玉(こうぎょく)がおすすめです。もしも紅玉が見つからなければ、りんごを火から下ろす直前にレモン汁を加えるといいですね。
それと、バターですが、私は薄切りにして冷凍したものを使っています。こうすることで、生地がだれずにクランブルをきれいに作ることができます。
また、クランブルとクッキー生地は、途中まで一緒に作ることができるところも、気軽に試せるポイントだと思います。
愛情を込めて何度も作るうちに、オリジナルのレシピも生まれるケーキ・シャルロトカ。クランブルのサクサクと、りんごの酸味とスパイスの風味、そして生地のしっとり感を存分に楽しんでいただきたいです。
マリアさん、前田さん、ありがとうございました!
<レシピ>
シャルロトカ 18cm底取れスクエア型1台
■材料■
- 生地
・無塩バター 125g
A強力粉 125g
A薄力粉 125g
A粉砂糖 45g
Aベーキングパウダー 小匙1/4
A塩 小匙1/8
・卵黄(Mサイズ) 2個
・バニラエッセンス 2~3滴
・冷水 大匙1/2
- フィリング
・りんご(紅玉) 1.1kg(皮を剥き芯を取ったもの。紅玉で約6~8個。)
・無塩バター 15g
Bグラニュー糖 165g
Bシナモンパウダー 小匙1/2
Bナツメグパウダー 小匙1/8
Bクローブ 4粒
(先端の丸い部分のみ指先で押し潰し使用。パウダーでも可。)
■手順■
1. 生地を作る。無塩バターをできる限り薄切りにし、ラップで包み冷凍庫で20分ほど冷やす。
2. Aを大きめのボウルにふるい入れ、1.のバターをほぐして入れる。粉類の中でバターの粒子が細かくなるまでカードで刻んだら、手の平で擦り合わせるように生地を砂状にする。中心にくぼみを作り卵黄とバニラエッセンスを入れ、カードで生地をひたすら微塵切りにするようにして混ぜ込んでいく。クランブル状にしたいので指先は使わない。満遍なく混ざったら半分弱をクランブル状のまま別の容器に移し冷蔵庫へ入れる。
3. 残りの生地に冷水を加え、手の甲で押し潰すようにひとまとめにする。バター(分量外)を塗った型の底に、生地を手で広げながら敷き込む。ラップをして冷蔵庫で1時間半以上休ませる。(グルテンを抑え焼き縮みを防ぐため。この状態で一晩休ませてもよい。)
4. フィリングを作る。りんごは皮を剥き芯を取り8等分のくし切りにし、更に2~3等分にする(1片2.5~3cm)。大きめの鍋に無塩バターを溶かしりんごを加えヘラで混ぜながら中火にかける。りんごに油が回ったらBを加え、水分が出てきたら火を強め焦げないように混ぜながら水分を飛ばしていく。水分がほぼ飛んで、りんごの1/4量程は角が取れ崩れかけているが、残りはしっかりと形が残った状態が理想的で、目安は約10分。バットにあけ冷ます。
5. 3.の生地にオーブンシートを敷き重石をして、180℃に予熱したオーブンで空焼きする。薄いきつね色になるまで目安は約30分。表面を焼くために最後の5分は重石を外す。
6. 重石を外してフィリングを乗せ(水っぽくなるのを避ける為出てきた水分は入れずに残す。)平らにし、2.のクランブルを満遍なく散らす。再びオーブンに入れ、きつね色になるまで約45分焼く。途中焦げそうになったらアルミホイルを被せる。網の上で冷まし、型抜きして粉砂糖をふるう。
■レシピのポイント■
・欧米諸国の製菓用小麦粉は日本で言う中力粉に近く、強力粉と薄力粉を合わせて使うと食感など近付けることができますが、全量薄力粉でも構いません。
・無塩バターはごく薄切りにして冷凍することで冷たいまま生地に混ざり込み、サクサクとした食感に仕上げることができます。バターが冷えていないとだれてクランブル状にならないので注意が必要です。
・りんごは紅玉がベストですが、手に入らない場合は酸味の強い固めの品種で。その際酸味が足りない場合には、仕上がりの少し前にレモン果汁を適量加えるとよいでしょう。また、フィリングのスパイスは揃うものだけでも構いません。
・オーブンによっては底面に火が入りにくいので、その際は天板も予熱しその上に型を乗せ焼いてください。また、空焼き後に型と生地の間に隙間が生じた際は、オーブンシートを型の側面に合わせて差し込むと、フィリングが底に流れ出るのを防げます。
・型がなくても、手持ちのホーローバットやグラタン皿でスコップケーキ式に焼くことも可能です。
<ケーキ制作とレシピのご提供>
前田まゆ さん
Hello Cake
吉祥寺のキッチンスタジオで、マンツーマンのお菓子教室とオーダーメイドスイーツを製作しています。
Instagram @hello_cake_baking
写真撮影 Maciej Komorowski